角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

かけおりる。

 

地下鉄駅の階段を駆け降りているときに声をかけられた。おくさんだったかおばさんだったか、かあさんだったか聞き取れなかったけど、少なくともばあさんでもばあちゃんでもなかった。
「元気だねえ」と言われたのだ。「俺なんか歩くのもやっとさ」と言いながら手すりにつかまって大事そうに降りていた。
私は駆け降りがデフォルトなのでいつか踏み外して転げ落ちる日がくるかもしれない。
とりあえず元気だ。身体が動くので、たまにパプリカダンスの練習をする。いや想像しなくていいけど。
 
以前の職場にやっかいな人がいて、言葉つきは大変優しいもののとにかく全員の悪口を言う人がいた。私と一緒のときは今ここに居ない人のことを入ったばかりの私に熱心に語った。しかも少しこちらが同調したりすると後日「角度さんもあの人を大嫌いって言ってた」とか言うらしい。
その人はそういうのが高じて居づらくなって辞めてしまったけれど、店長が「でもいい子なんだよね」と言ったので大変驚いた。お酒さえ飲まなければいい人とか、あれさえなければいい人という言い回しが良くあるけれど、そんなことあるものかと私は思う。悪口さえ言わなければいい人というのがいるはずがないと思うのだ。放火さえしなければいい人とか、暴力行為をしなければいい人とか、もう何でもありの性善説になってしまう。
 
私は鼻血がでなければ、血圧が上がらなければ元気だ。
耳鼻科の先生は「鼻血で死んだ人はいないよ」と仰ったけれど、仕事日と重なると大変なことになると私はこわがっている。それに片手が塞がるのは想像以上に不便なことなのだ。乾燥の季節は神経がとんがってしまう。
処方箋薬局で、知人と出くわしたらしい老婦人が声高に話しておられた。自分は90、姉が93、妹は87歳とのこと、私はきっと無理だ。ご長寿を愛でるに吝かではないけれどマスクは着用していただきたかった。
 
霙に打たれた銀杏の葉が貼りつく道を歩いて帰宅した。生きてる人はなかなか寂しいものだ。