3月の蛍は3月でなければならない。3月の旅を失くした。失くした旅の重さで窒息しそうになった。 次の3月はこないかもしれない。次の次の3月はないかもしれない。その次の3月に私がいるとも限らない。いつの3月だって、来月の3月のようではないのだ。 トレッ…
6月になると事務所のベンジャミンの若木が次々に葉を繁らせた。光沢のある青葉をつまんで、「Mちゃんは、こんな感じだね」と言うと「ありがとうございます」と笑う。 彼女は、春先に事務所にやってきた期間限定のバイトさんだが、ひと月たち、ふた月たちす…
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