角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

そつぎょう。

 

高級料理店が高級な調味料を使っているとは限らない。料理店でこだわりの素材ばかりを使うなら原価が激しくあがってしまって、本当に超一流店でもなければそんなぜいたくはできないはずだ。
だから調味料や原材料にこだわれるのは、ご家庭ならではのことだと思う。良いものを使えばどう転んでも余程の転び方をしないかぎり不味くなりようがないから、お料理がお好きなご家庭の主婦の方がずっと美味しいものがつくれると、半ば本気で思っている。
 
年末近くに試験的に鰹節の最高級品と三番手を買った時のことは日記に書いたけれど、本当は私は一番目と三番目はやっぱり随分違うと思う。お正月をすぎて通常レベルの鰹節に復帰すると、少し悲しい気持ちになった。
出汁にこだわりたいと言っておきながら、自分が美味しいと思う鰹節を自分の店で使うことはないだろう。とても美味しい鰹節はとてもお高い。それを使って毎日何リットルもの出汁を引くなんてどだい無理なのだ。
 
私が作業をする蕎麦店には居酒屋メニューがたくさんあって、揚げ焼きという比較的良く出るアイテムがある。これは冷凍庫から三角揚げを出してきて数十秒レンジで解凍してから、油で両面をこんがり焼く。カリッときつね色の焦げ目がつくまで焼く。焼いたら四つに切って刻み葱とおろし生姜をのっけて、それで終わり。それが美味しそうなので、自宅で小揚げを焼いてみた。葱をのせて生醤油をかけると、それはそれは美味しかった。
 
私は自分が何をしたいのかますます分からなくなる。
熱々の三角揚げをほおばって、人肌の燗酒を飲んで、蕎麦を手繰って、お客さまたちは嬉しそうなお顔になって「いやあ美味しかった」と言ってお帰りになる。これでいいんなら、これでいいんじゃないのか。
 
それこそ高級割烹の日本料理を召し上がりたいお客さまが私のところに来られたって困る(笑)。けれど自分の実力を度外視して、顧客視点ではなく自己都合でものを考えてしまい、その違和感を自分で感じているので、いつまでもすっきりと決断できない。自分自身が納得できないうちは全く動けない。
店主の数だけ店の顔はあるのだから、私はどんな人になったらいいですか、なんて人に聞くようなことじゃない。

何かの記事に、女一人でやっている店の独特の「いやらしさ」と書いてあって、びっくりした。そんな言われようをするんなら女を返上してもいいと思っている。あ、返上でなくて卒業かな。