角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

濃い目の一週間だった。

 

すすきのまで歩く通り道、電車通りに、校外実習で行ったお店がある。
国産ライムが手に入ったので、おすそ分けにまずはそこに立ち寄った。

2店の店長は、以前同じ職場で仕事をしていた仲間で、その頃の料理長が学校で日本料理を教えてくれた先生という訳だ。

電車通りの店で、卒業してからすすきのの店に通っていたことや、前日でそこを辞めたことを話すと、うちにくれば?というので、そうすることにした。もちろん修行なので無報酬があたりまえ。

  
それから、すすきのまで行って、ようこさんと2人の板前さんに実は昨日で辞めたことを告げて、挨拶をして、僅かばかりのライムを差し上げた。
 
最初から、見ているだけというような立場での入店だったし、確かに随分と勉強になることは多かったものの、毎日見ているだけなので気持ちが疲れた。それで方向間違いは即座に訂正するべく、たまたま顔を出した社長とお話しし、その日で辞めた。
 
ようこさんというのは30代になったばかりの仲居さんで、手持無沙汰な私にビールサーバーの使い方と洗い方を教えてくれた。だから私は生ビールを注げるようになった。数日後「今日はお酒の勉強をしましょうか」といって焼酎の話、日本酒のこと、ロックに水割り、お湯割り、何か割り、それにサワーの作り方を教えてくれた。私はウーロンハイが何か、ということも知らないので、メモしまくりで教わった。
 
挨拶に行った日、ようこさんはやっぱり日本酒ケースを椅子にして化粧をしている最中だったけど、ビールサーバーの洗い方で言い忘れたことがあるの、といってビューラーでまつ毛をくいくいっと上げながら、教えてくれたので、私はようこさんは本当にいい人なんだと思った。1週間も居つかないような人間が辞めるときに、そういうことって普通はどうでもよくて言わないと思う。

ちなみにようこさんはお酒を全く飲まない。
ずーっとホステスをしてきて、その時代に何度か救急車で運ばれたと言っていたのでもう一生分のお酒をのんだのだろう。たばこも16歳の頃からすっていたので、もうやめたのだそうだ。
結婚をしたいけれど、出会いがないし、昼間の職業についたことがないから職歴もないんだと言った。何かおせっかいを言いそうになったけれど、彼女だったら多分自分で気がつけるはずだ。私はようこさんが賢いのを知っている。
 
板前さんのひとりは15の時からこの道に入り、オブラートのような桂剥きをする。すごいと言うと「これでめしをくってるからねぇ」と言う。私が全然うまくならないというと、皆最初はそうだ、誰だって初めからできるやつなんかいねぇよ、スランプがきたら休め、と一生懸命言ってくれる。
 
息子と同い年の板前さんは20歳を過ぎてからこの道に入ったというので、その前は何をしていたのか聞くと、少年院に入っていたと言う。暴走族で、複数回入ったのだそうだ。息子と彼と、私と彼の母親と、同じ年齢なのでなんとなく親しみが湧いてご親切をいただいた。一つ余計に焼いたといって幽庵焼きを味見させてくれたし、出汁の黄金比みたいのも教えてくれた。シラウオの生も味見させてくれた。味見はとても大事なのだ(笑)。さすがに鮭児の味見はなかったけど。
 
学校で学ぶ人もいれば仕事で学ぶ人もいるのだと思う。
私はといえば、自分の分のライムをママレードにしたけれど、失敗した。
前回はとても良い出来だったのに。せっかく購入した国産ライムなのに。私はいつ利口になるんだろう。