角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

特に高揚感もなく。

 

どのくらい時間がかかるものか、朝から店に行って掃除時間を計測すると、1時間以上かかることが分かった。厨房以外の作業としては、掃除の他に、開店スタンバイがある。おしぼりをどうにかするとか、箸袋関係。外に掲出する黒板も更新しなきゃいけない。こまごまとした雑多な用事は結構時間をくうものなので、大まかに見て厨房以外は2時間とする。
 
魚や野菜の調達を当日、掃除の後にしようと考えていたけれど、どうしても時間がつくれない。下手すると仕込みが午後からになってしまうので、昼の2時間を銀行や仮眠に回すことができなくなる。
どう考えても時間が足りないので、十分な仕込み時間をとるためにはやはり食材は宅配してもらう必要がある。けれどそう割り切ってしまえば気持ちは少し楽だ。時間には代えられないので、自分としては、経済重視の運営をするのが目的ではなくて、丁寧な調理をするのが目的なので、とりあえずは宅配先を検討することにした。といっても、明日には明後日の分を発注しなきゃいけないのだけれど。
 
お昼頃、M先生が電話をくれた。やはり身体的に不調であり、気にかけていたけれど、何もできなくてすまないと言ってくれた。誰かヘルプに入っているのかと聞かれ、誰もいないというと、大層気の毒がってくれた。私は作る分量すら分からないのだ。5人分でいいのか20人分は必要なのかまるで分からない。でも誰だって他人の店のことなんか分かるはずがないので、まあいいやと思う。プレオープンは関係者だけだし。先生の声を聞くとなんだか泣きそうになって、私はオヒタシくらいしかつくれないのだというと、先生が、それでいいんだと2度言ってくれたので、電話を切ってから少し泣いた。本当にいいのかそれで。
 
でも、日々の後始末はきっちりその日のうちにするのがいいと言う。疲れるのはしょうがない、と言われたので、しょうがないと思った。すんなり閉店したとしてもその後そうすると2時間以上は帰れないのかもしれない。自宅に戻ってからもすることはあるので、睡眠時間は少ししかとれないから、昼の仮眠は誰がなんといおうと死守したい。
 
雑誌とかテレビとかで、きれいに髪を結って着物をきて割烹着をつけて口紅もつけた女将さんが、何もかもひとりで切り盛りしています、とかいうのは勿論でたらめなんだろうと思った。早朝からお豆腐を買いだしに、なんてキャプションのついた買い物かごをぶらさげたショットがあったとしたって。必ずや下働きの人が支えているはずだ。
私は鏡で自分の顔を見ることも忘れてて、顔が今でもあるのかどうか分かんないくらいなので、さっきちょっとのぞいたら、あった。
 
多分、店は続かないだろうけれど、評価はそんなところではなくて、私が自分の仕事場を自分で作ったということはちょっといいんじゃないかと思う。つまり穴におちかけた自分の襟首を自分で持ち上げることが私はできたのだ。誉めて欲しいとしたら、そこ。