角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

野となる日。

 
開業案内はがきを各所に郵送した。私は商売をするのであるから、過去の些細な齟齬やわだかまりはこの際無視しようと決めた。バイト料遅滞の彼女が電話を寄越して、未払いのバイト料を持って店に顔を出してくれるとのこと。店での飲食代に使ってくれたら、それでいいんだけど。それから元シャチョーが連絡をくれた。私がずっと怒ってるのかと思っていた、とか言う。そりゃあ怒っていたけれど、もういいと思った。

どうせ老い先短い我々が、軋轢も齟齬もないもんだ。何かこだわりを胸に秘めているよりも、仲良く話しができた方がやっぱりずっといいと思った。人の葬儀を超えたりすると、もう本当にどうでもよくなる。
 
試食チームは、合計6回、延べ8人、ユニークデータで3名が試食をしてくれた。本当に彼らがいなかったら私はいつまでも開業できないはずだ。心からありがたいと思う。持つべきものはやはりクラスメートだったのだと今さら感じる。しかし女性陣の気配はない。
 
毎週のようにきてくれた人は、年金氏であるけれど、毎回若干の食材差し入れをしてくれ、かつ過分な原価相当分を置いて行ってくれた。関係性は変わるのだ。
で、しょっちゅう来てくれるので、以前に約束した居酒屋行きはもういかなくていいかなと考えていると、改めて、行こうと言われたので、義理的にも行かなきゃいけない雰囲気だ。デートな気分はお互いに皆無だと思う。私は、好かれたりするのは面倒なので無用だ。お客さまとしてしばしば来店してくれればそれが一番だ。
 
本日は、少しお酒のことを考えていた。通販よりも酒屋さんに配達してもらった方が絶対にいいので、市内の数件にあたった。希望する日本酒がホームページに掲載されていたので連絡したところ、希少品であるためお得意様にしか売らないのだという。通販ではやたら高価になっているお酒だ。じゃあホームページにのせるな、と言いたいところをこらえた。
 
私ごときは全く相手にしてもらえず、買いたいものが買えないということを激しく理解した。
またある店では、抱き合わせ販売をしていて、あの焼酎を買う権利は他の何かを数本買わなければいけないというルールがあったりする。欲しい商品が全部一か所で揃うわけではないので、あのあれを買うためには、この商店、と、抱き合わせも踏まえて仕入先を分散しなくてはならない。
生産量に限りがあることは分かった。米の収量にも大きな影響を受けるし、時期もあることだし。
とすると、自店では、大きな店と競って、それこそ獺祭だの田酒だのを揃える力はないし、必要もないのではないだろうか。
焼酎も日本酒も次月からはマイナーチェンジをしつつアイテムを絞り込んでいくか、伏見・灘の通年で買える銘柄にするか、あるいは地酒なら、難しい各地産ではなくて道内地酒にするか方法を考えよう。
種類を広げすぎると酒屋さん時点で二進も三進も行かなくなる。いつさばけるか分からない在庫を抱え込むことになるし。泡盛は面白いと思うけれど、今は時期尚早かもしれない。
 
小さい店は小さいなりのやり過ごし方があると思うけれど、そこらへんの相談にのってくれる人もいないので私は分からない。何一つの相談にも誰も親身にはなってくれないものだというのが良く分かったので、やはり好きなようにするしかない。私は目標額を決めたのだ。売上ではなくて、商売につぎ込む上限額を。それがなくなった時点で店はたたむ。あとは野となれ、命まではとられないだろう。
  
  
往来する子どもたちと、たまに話をすると大変に可愛らしいので、こどもごはんを作りたいような気もするけれど、お酒を提供する大人の店に、やはり子供を入れたくはないものだ。