角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

溝鉋。

 

竹中大工道具館の開館35周年記念巡回展に行った。私は旧い住所の時に一度、現住所になってから二度ばかり大工道具館を訪れていて、巡回展でなければ四度目の来訪をしただろう。
 
仕口や継手による木組の展示なのだが、ヤシの葉で縛ったあたりから木組みに至るヒトの知恵には驚かされる。錦帯橋を訪れたことは未だないけれど、その模型もあった。
各木組みにモニタがあって、CGが分かり易くて有り難かった。とはいうものの、何度CGで納得したつもりになっても、私は空間図形を殆ど理解できず、豆腐の切り口の想像もなかなか容易ではないタイプなので、私が木組に惹かれてやまない理由というのは、いつか理解しようとか、いつかこのパズルを解いてみせるとかそういう気概ではなくて、ただただ不思議、という素朴な驚嘆でしかないと思う。不思議とは美しさのことでもある。私のようなガサツな人間は精緻さに打ちのめされるのだ。
 
河合継手というものがあって、こういう発案がどこから出てくるのか、同じ人間とは思えないのだった。あちら側からすると私をこそ人間とは思えないのではないかとも思う。
 
映像については本館のサイトにアップされていたので早々に見たけれど、大きな画面で再度拝見した。指物も素晴らしい。須田賢司さんという方の映像では木材の選定から金具のパーツにいたるまで要するに何から何までを自らの手でつくりあげていく行程が紹介されていて圧倒された。調べるとすでに人間国宝の方であった。
 
象嵌と共通するところがあると思った。私は象嵌という手法も好きでひかれているので、なるほどと自分の好みに納得した。
 
美しいものを見ることができて良かったとしみじみしていたら、東京国立博物館で「工藝2020」が開催中であるらしい。ドキドキした。ああ行きたい。