角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

卵の精。

  
ご多分に漏れず慢性的に人手が不足しており、週に一度だけ特定曜日の午前中に他店からの応援を頼んでいた。その人と入れ替わる形で私がシフトに入っていたので、多少重なる時間もあり、ベテランの人のやり方を見せてもらったり教えてもらうことも多く、友好的に過ごせていたと思う。

その人が今月いっぱいで会社自体を退職することになり、あと数回しか会えませんねという話をしていたのだけれど、先日の特定曜日に、その人が来ていないから至急出勤してくれないかと店から電話がきた。
 
通常よりも約2時間遅れのスタートなので「どれも急ぐ」状態で作業を開始し、そこから8時間通しで立ち働いたのだった。
何かおそらくは本部とのやりとりで感情的になって仕事を捨てたのだと思うけれど、検索すると、「ばっくれる」ことがそんなに珍しくもないということを知って驚いた。
 
私は、彼女に対して怒りの気持ちは湧いてこなかった。
何年も勤めて、もっと上の働き方や職階をのぞんでいたらしいことは本人から聞いていたから、熱心な仕事人ではあったはずだ。

そんな行動に出てしまう引き金がなんだったんだろうと思う。私はただのパートなので本部との関わりはこれまでもこの先も皆無だから想像もつかないけれど、きっと彼女にしたって、うまくきれいに退けなかったことは良い思い出にはならないだろうと考えると、むしろ気の毒だ。
 
お世話になったので、何か、今度は梅干しではなくて何か小さなギフトを、と考えていたのが無駄になってしまった。
お礼も言えなかった。 
 
店は彼女が来なくて商品を製造販売できなかった分、いくらかの機会損失を被った。私が製造販売して多少追いついたからそれほどの損失はなかったのかもしれない。
けれど私の方は急な呼び出しでいつもより2時間ばかり多く作業をしたので、ちょっと疲れたし、第一焦った。でも時給はちゃんと発生するので、私が被った迷惑というのはそんなに大きなものではない。急がなきゃと動揺したくらいだ。だからそんなに大したことではないのだろうか。良く分からなくなった。
 
で、急いでいるときに何か冷蔵庫の上から落下物があって運悪く卵ケースに当たり、運悪く卵ケースを床に落としてしまったのだった。


卵ケースといっても10個のパックではない。

割れていないものもあったし、多少のひびで済んだものはセーフだし、それでもいくつ割れてしまったのか見当もつかない。急いでいるときに限って余計な仕事を発生させてしまい、とても動揺した。卵はべたつくし。
 
そういうことでココロが折れそうになったり、急いでも急いでもはかどらない作業にココロが折れるタイプの人間ではないので、ひたすらこういう時は、うまずたゆまずくっせず、小学校の校歌にそういう歌詞があったけど、つまり私は、あきらめずに黙って作業し続けていられるので、それは昔のきつい仕事でつちかった根性なので、まあ良かったかなと思う。
 
そんな時に嗚呼と嘆息して頭を抱えて座り込んだり、ものに当たったり、愚痴を言い募ったりすることは何一つ解決には結びつかないので、とにかく作業の遅れは作業することでしか取り戻せないのだった。
 
実は数日前に、「私がした大失敗」みたいな話をしていた時に、同僚の人が、今まで入ってきた人の中でいちばん凄かったのは、卵のケース、30個以上入りを落として固まってた人だと教えてくれて、あははははと私は笑って聞いていた。

きっと卵の精、いるんだね。