角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

上出来。

 

近場の温泉のお土産を渡したいと愚息から連絡がきたので、餃子を作って冷凍しておいた。
 
夕ご飯を一緒に食べる時間がないというので、お土産の羊羹を切った。
開口一番、結婚するというので、それは良かったおめでとうと言った。

挙式も披露宴もせず、家族の顔合わせ食事会で婚姻届に署名して、新しい戸籍をつくるとのこと、賢明だと思った。

母一人息子一人の母子家庭、といわれるとびっくりするくらい私には母子家庭意識がなくて、それは、私の母がいてくれたからだし、私が自営の仕事を忙しくしていて私自身がが父親のようであったためだ。
 
大学入学と同時にひとり暮らしをさせたのも私の戦略といえば戦略だ。徒歩でもいける距離だったけれど、もう二度と一緒に暮らすことはないと息子に言うと、やはり未成年は、少し動揺したようであったし、明日が引越しという日の仕事帰りのバスの中で私はもう乗ってから降りるまでずっと涙をだらだらだらだらと流し続けてとめられなかった。自宅で涙を流したくはなかった。私が一番悲しかった日だと思う。あのときに、思う存分泣いたので、私は今は。
 
思い出すと泣けてくるけれど、それはあのときのあの悲しみのためであって、今が悲しいわけではない。
 
もうひとつ私はシミュレーションをしていた。必ず祝福し、口出しはしないと、決めていた。なぜなら私は自分の息子を心から信用しているからだ。あの子が決めたことに全く異論をはさまないのが私の人生だ。若い人が全てを過誤なく生きることは不可能だろうと思うけれど、その時はその時で何度でもやり直せばいいと思っている。
私が一ミリも不安や不満を言わなかったことで、息子はとても嬉しそうだった。それが全てだ。
 
そそくさと息子が帰ってしまったので、私は残った羊羹を全部食べた。それから餃子を焼いた。たくさんあるので昨日も今日も明日も私は餃子を食べる。
 
私をただの変人だと思っちゃいけない。私は、私は上出来なのだ。
 
蛇足ながら、私は髪染めを再開した。ナチュラルにも限度があると思ったし、何しろ友人知人がすこぶる元気だ。そうすると、大変OKになった。息子が私を見て、ビジュアル系か、と言った。
 
ほら、上出来なんだ、私。