角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

意気地なし。

 

けたたましいからケタさんだ。
ケタさんには、ギャラ社の古い展示企画のときにお目にかかった。けたたましく喋りまくるはったり女だというのが、その人に私が抱いた当時の印象だった。けたたましいのは嫌いだ。喋りまくるのはうるさい。はったりが強い人間はいやだ。はははは。
 
えーと本日はエクセルとかアクセスのお話でギャラ社に請われて行った。
新人スタッフが、居合わせたケタさんに「今日はエクセルとかに詳しいひとがきてくれる」と話していたらしく、私を見るなり、パソコンに詳しい人が来ると言ってたから誰かと思ったらあなたか、思っていたのと全然違うではないか、とかなり笑う。

少しやかましい。

ギャラ社の彼女がすかさずとりなしてくれたけれど、「販売の手伝い」の人だと思っていたとさらに笑って、「じゃあ統計とかできますぅ?」と聞くので「はい」とだけ答えたら、黙った。
それ以上の言葉を繰り出す気持ちは私にはない。変な質問には適当な答えでいいと思う。
   
私ははじめから中高年だったわけではなくて、若くて仕事に追われていた日々もあったのだけれど、まあいいや。年をとるというのは実際そういうことなのだ。生まれたときから年寄りだったような扱いを受けるものなのだ。やれやれ。
 
私は言い返したり切り返したりしない人間だ。つまり、なめくじのように静かな女なのだった。ぬるぬる。
じめじめはしていない。
 
私のこんな性分を一番嫌ったのは母親だ。まるでCMの中で吉田羊さんが言い放つように「いくじなしっ!」と私をいつも叱った。今更、そういう性分は変わるわけではないので、このままなんだろう。それに、今日のできごとに関しては、特に自分はパソコンにもエクセルにも詳しいわけではないので、妥当な見方かもしれない。
 
ギャラ社のエクセルのいろいろに関しては、誰が見ても簡単で納得できるようなつくりがいいと思っている。高度な作業の一端を、理解できないままに作業するよりも、簡単なことを理解しながらするほうがきっと仕事は楽しくなると思う。第一それを使うのは、あまり得意でない人ばかりだ。少しくらいスピードを犠牲にしても意味を分かって入力してもらえる方がいいので、ピボットすら使わない形にした。
 
ギャラ社はつぶれてしまうかもしれない。今までで最も危ういところにいる。彼女もやつれてしまった。
私ならこうするということが彼女とことごとく違うので、というか彼女は疲れ切ってしまい、何も決められないでいる。
自分の場合であれば全部捨てる。そしてそれを実に素早く決断・実行するけれど、彼女は違う。中心部から離れた場所に引越しをするのも、店を閉じるのも、サイズダウンしていくことなど耐えられないに違いない。それだけ好きな仕事、ということなんだろう。自業自得以外のなにものでもないと私は考えているけれど理由はともあれ窮状は気の毒だ。
私にしばしば来てくれといわれても、私にできることなんか何もない。仕事をしても請求がしにくい。
 
私は、枝葉を切り落としてシンプルに生き延びてきたけれど、彼女は枝葉を伸ばし伸ばして生きてきた。だからきっと救済の手はどこからか差し伸べられるのではないかと私は楽観する。
  
帰りしなはひどく雪が降っていたので、ケタさんなんかホワイトアウトに合ってしまえ、と思いながら歩いた。