角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

いろいろたくさんのことを考えて、書けなくなってしまっていた。

 

ざっくり言って、産休の人が巻き起こす問題だ。
 
ギャラ社のスタッフ、Mさんはとても優秀な人だ。よくこんな人が見つかったと思うくらいに責任感が強く、仕事が早い。ライターなので文章はお手の物だし、イラストも描くし、接客も誠心誠意をつくすような、あつらえ向きの人材だ。Mさんはこどもを早急に産みたいからといって、自ら正社員ではなくアルバイトを選択した経緯があるという。
 
そのMさんが今週一杯で産休に入る。予定日は5月だ。極めてスタッフの少ないギャラ社では、残っている人だけで仕事を回すことが到底できず、パート主婦をお願いすることにした。
今、鋭意引き継ぎの真っ最中なのだけれど、どうもそれが思わしくない。
しゃちょう、つまり彼女の期待するところに合致しないのだという。尤も彼女の期待というのは山よりも高く海よりも深いので、そんな人材はいるわけないでしょ、と常々話しているのだけれど。
 
でも、問題はそのパート女性のレベルではないのだと私は思う。おそらくどちらからともなく物別れになると考えていて、またしても人さがしに心を砕くことになるはずだ。人探し問題はこの会社の特徴であって、それがやっと少し落ち着いたかに見えたのはMさんが居てくれたからにほかならない。
 
しゃちょうである彼女、面倒なのでCさんにするけど、Cさんからはかつて何度も何度も私に仕事を手伝ってくれと打診があった。店をはじめる前にも。私はといえば、彼女の期待に沿うような出来栄えの女ではないし、話半分に聞いていたし、それどころではなかったし、第一私へのギャラをさぼるなんてのは言語道断なので、来た電話にも私は出なくなった。
それが店の開店を機に関係が復活したわけだけれど、Mさんの産休が迫り私の店が閉店した時点で仕事の話が再燃した。
 
誰が引き継ぐにしても、こういう境遇での働き方というのは実に難しいと思う。Cさん自身がどういうポリシーを持っているのか良く知らないけれど、まずはMさんに1年といわず早く復帰してほしいこと、もどってきたMさんをCさんの後継者と位置付けて正社員待遇にしたいとMさん本人に言っている。
 
補充要員として働く側にとっては、熱心に仕事をしても1年経てば切られる、というのはいかがなものだろう。私がその点をたずねると、Mさんに復職したい気持ちが強くあっても、現実的には仕事の性質上難しいことだから、恐らくやめてしまうだろうと言う。
 
さて、自分ならどうするだろう、とずっと考えていた。世間的には産休や育休に対する意見は極端から極端まで人の数だけあるようで、私は正直なところ、良く分からない。分からないなりに、どうするだろうと、暇にまかせて他人事をずっと考えていたのだ。
Mさんは第一子だけで終了するとは限らない。もうひとりのスタッフNさんも既婚女性なので産休への距離は至近だろう。さらにもう一人、若い男性スタッフがいる。最低3名いなければ仕事は回らない。さて。
 
他人のことならいくらでも言えるので、私なら、こうする。少し時間が必要だけれど。

― ここの仕事に、規模のもつ意味というのは大きいから、会社は縮小しない。でも利益率のきわめて低い編集企画部門は縮小して、ハウスエージェンシーのような自社のPRに特化する部門にするのも一つの手、そして若者男性はそのままで、現今パート主婦は契約解消の上、経理堪能者を正社員扱いで雇用する。経理と総務は兼務。大体、会社の根幹である会計業務を1週間に一度くらいちょろちょろ現れるパート女性(私のことだけど)に任せるのはよくない。
それからMさんが復帰するまでの1年のあいだに引っ越しをして、今あるギャラリーと別フロアにあるクラフトなどの店を同じフロアに置く。そして戻ってきたMさんと今いるNさんと交代勤務にする、と軽作業などが発生した際も非番のどちらかにお願いできれば、3名分の業務に対して4名がいる形で何とか回るのではないだろうか。NさんとMさんの給与は時間数減少によりベースは二分の一になるけれど、プラスアルファの出勤分を加えると、働きやすくなることと相殺できなくもない。Nさんが少し割を食うかもしれないけど、基本をレベルアップすることで今のフルタイムに近づける。
 
さらに、そうこうしている間に会社の拡大プランを固めてから身売り企画書を作って会社ごと売る。売って自分は経営から退いて企画と営業に専念する ― 引越しとか、言うのは簡単だから言ってみたけど、本当にヒトゴトだ。ヒトゴトであるうえに、彼女の人生が私の人生と重なり合う部分をつくらないのだ。あはははは。
  
店をだめにした私の話なんか、だれも聞きたくないと思うけど、でも、私があの店を閉めたのは私の判断であり私の意思だ。大金をかけて始めたことは引き時を見失いがちだ。そうするとさらなる損害を生み出すと思ったので、だ~れも誉めないけれど、よい判断だったのではないだろうか。負け惜しみだけど。
 
  
いろんな立場の人がいて、産休ひとつとったって、自分やパートナー、雇い主、代替要員、その他同僚、親などさまざまな人を巻き込んでしまうので、それぞれの立場を大切にするということは難しいものだ。一番大切なのは赤ちゃんでしょ、とか必ず言い出だす人がいるけれど、それは本当にそうなんだろうか。一番も二番もないと私は思う。そういうのはきっと「老害」とか言い出す人と根はつながっている。