角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

こわくて冷蔵庫に通電できなかった。

 
お手伝係のOさんが棚板や工具を持ってやってきて、私が通販で買ったパーティションの取付だとか、いろいろをまめにこなしてくれる。ご自宅で不要になった小さい食器棚もいただいた。
彼は、味噌カツのまちの人で、奥様をまだ向こうにおいて、単身でやってきた。そして独力で建てたログハウスにお住まいだ。そんなすごい人なので棚のひとつやふたつはお茶の子らしい。
 
彼は何でも良く知っているし、できることもたくさんある。オムレツも得意だったり、鰹節は自分で削ったり、本当にあれもこれもできてしまうようだ。初日には、彼が作ったお菓子をいただいた。美味しくいただく私ったら、情けないことこの上ない。
 
どうして何でもできる人がいるのかと考えたら、私のように何もできない人間とのバランスなのだと気が付いた。世の中的にはうまくバランスがとれているにしても、負の部分を自分が背負うのは、きつい。 
私は、店を人任せにしていっそ旅に出たい。どうして私は何もできないんだろう。どうして何の役にも立たないんだろう。呆れる。
私はクラスの人や先生方が、私のことを何と言う強心臓であるかと思っているんじゃないかと思うと本当にいやだ。自信がなくて毎日びくびく暮らしているのに。
 
恥ずかしい話だけれど、私は専門学校での成績は座学は良かった。でも実技は優をとれなかった。中国料理の鶏唐揚げが優だっただけなので、トータルでは良にしかならなかった。手ははやかったけれど、雑で不器用なので、あれだけ練習して包丁も、卵もうまくならなかった。学校では、学力の優劣とかは全く関係なく、生活態度も関係なく、しょっちゅう学校をさぼったりしていても、先生の説明なんか聞いてなくても、そして、何の練習もしなくたって、すんなりとうまく卵を巻けたり、オムレツを転がせる人がいた。私は恥ずかしくてかなしかった。何のサクセスストーリーもありはしないのだ。
 
ずっと前、M先生に連れられていった居酒屋は学校の先輩の女性がやっていて、「学校では当然全優だった」と言って、ちら、と私を見たとき、「私も」と返事をできなかった。悔し紛れに悪口を書いてしまうと、何を頼んでも美味しくなかったけど。
 
お店は、私の技術力のなさをごまかすために、家庭料理の店ってことにした。もちろん他の家庭料理のお店はちゃんとしているに違いないけど。おそうざい(いわゆるオバンザイ)を日替わりでいくつかと、定番のものを少し、それにご飯、お酒少しのコンテンツだけど、イオンのおそうざいバイキングをリサーチしたとき、人気、つまり残りわずかなプレートが「南瓜の煮つけ」だったのには正直、驚愕したので、早速南瓜を購入し、試作したところ、たいへん美味しくできたので、これをこそビギナーズラックと言うんだと合点した。
 
本当にいちばんはじめは、いくらの醤油漬けがあまりに美味しいので、食べさせたいなあ、というただの押しつけがましい気分だった。今はそれに糠漬けもちょっと参加。
  
お好きかどうかも知らないのに、そこを種にして金平糖のようなでこぼこの私の店ができあがる。