角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

鳥だ。


1、2月は蕎麦店手伝いに行かないというのは前から決めていたことだ。なぜなら2013年の1月時点で、すでに必ず2014年も引き受けてくれ、と仕事先に押さえられていたからだ。ところが蓋を開けてみると事態は違った。
 
そのクライアント社は、日記にたびたび登場する倒産した代理店時代からの顧客でその時からずっと担当者は変わらず、代理店が倒産した時に、その顧客を手土産に本州系の大手代理店に契約社員か何かとして雇用された。
顧客企業自体は大きな会社であり、業績も良く、年初の仕事は必ず発生するものだ。
年末にはまだ顧客企業内部で方針が固まっていないと言う話が、年明けになっても動き出さない。
私の直接の顧客にあたるのは本州系の大手代理店であり、年末の話では、彼の役職身分が個人事業主扱いになったが、私への支払関係はそれまでと同様に、大手代理店の営業担当名義で発注するから安心していいということだった。
 
自分の方は、この2か月の働きで少し落ち着こうとしていたから音沙汰がないのは極めて不安であり、開けて1週間くらいしてからどんな具合か一度メールすると、返信には、動き出したら連絡するから待て、という年末と同じ内容のものだった。
 
多分、おそらく、彼の性格上、クライアント社には年末以降、確認をしていないのではないかと考える。
彼自身は別に干されているわけでもなく映像関係の人間なので、そちらで忙殺されているのだ。昨年まではそうだった。

ましてや個人事業身分とはいえ年俸契約をしているならば多くのサラリーマンと同様の精神構造になるだろう。つまりわざわざ自分を忙しくする事案をひっぱってくる必要なんかない。
彼から私以外の他所に流れることは絶対にないので、恐らく彼自身の立ち位置の変化もあり、顧客先の動きが変わったのだと推測する。それは別に彼のせいではないので、仕方がないことだ。
 
自分が彼の立場ならどうするだろうか。
やっぱりそこは、顧客企業に熱烈カクニンするでしょ(笑)。期限を切ったりもすると思う。そして口を開いて待ってるような弱小発注先には、早い所連絡をつけるなり、いついつまでは待てと言うと思う。さまざまな事情を知っているのだし。

からの箱に入れてどうしようっていうんだろう。餓死しないうちに早く逃がしてやればいいのに。

仕事はあるともないとも言われないままに立ち消えた。
 

つい先日、地下鉄構内で彼を見た。
 
私は椅子に腰かけてカバンの中をかきまぜていた(笑)のだが、ふと顔を上げると、数メートル先を彼が歩いていた。恐らく彼の方が先に私を見つけたのではないかと思う。そういう事って良くあると思うけど。彼は携帯で会話中の様子をしつつ、おもむろに大げさにコートの襟を立てて顔を隠すようにして行ってしまった。
 
人は大半が、そんなもんだと思う。

自分は残念でたまらないけれど、彼には彼の暮らしも事情もあるのだから、本当に仕方がないし、勿論恨んだりするのは筋違いだ。ただ残念なだけだ。20代の頃から仕事付き合いをしてきて、離婚したときも再婚したときも教えてくれたし、倒産社から抜け出した時も、引き続き仕事をお願いしたいとわざわざ私の事務所まで言いにきてくれた。

そんなわけで私は一月を暇に暮らす。これは本当に想定外だった。ほんとは冬用のスカートが欲しかったのだけれど、早まって買わずに本当に良かったと思う。だからといって夏のスカートで震えているわけではない。
 

彼に感じる私の寂しさや残念感は、ひるがえって私の至らなさによるものだ。
たいていのことは、自分自身の駄目さ加減を映し出しているのだと思う。私がこんなだから周りもこんななのだ。
 
 
 
逃がして欲しいと思ったとき、自分が、自分の方が鳥だったのを知る。何もない箱の中にいて、逃がしてくれても、もういいではないかと思うから、私は鳥なのだ。箱を覗かれもしなくなった鳥だ。鍵もないのに動かない鳥だ。第一壁なんてないのかもしれないのに、逃がして欲しいと思うから鳥なのだ。