角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

石積み

 

その銀杏並木を好きになったのは4年前からで、だから多分4回写真を撮って、4回送ったかどうかは覚えてないけど、4年前より前というのは、銀杏並木のことをあまり考えたりしない時期だった、というよりは、見せたいと思いついてわざわざ写真を撮りに行こうと思えるような人がいなかったと言った方がいいかもしれない。
同じまちに住んでるならそんな必要もないんだけど。
 
土曜日の一日中を雨に降られたので、夜は長靴履きで出かけることにした。
ライトアップの様子を写真に撮ってはみたものの自分の傘の端っこが写りこんだり、へたくそな上に寂しいライトアップのせいか並木の感じが出ていないので、明日の朝もいちど来ようと、ちょっとむきになって、それで日曜の朝は、ごはん前に家を出た。車なら10分だ。
やっぱり雨と風だったので、傘をささなくてもいいように、シャカパンの上にレインコートを着ると、あちこちシャカシャカした。車は近くの駐車場に入れた。自然光の方が余程良かった。
 
銀杏並木は、特に珍しいわけでもないから、検索するとそんなに違う筈もない似たり寄ったりな画像が広がって、おまけにどれもみんな綺麗で、自分のしてることがすごく間抜けな気がして、それも4回も間抜けなので、ずいぶん念入りだと思った。
 
いちばん大切なものをさしあげようとしていた。
 
♪あなたに女の子の一番大切な~ いやいやいやいやそうではなくて。
 
そういえばこの歌の「おんな」の部分を「おんなのこ」とつい歌ってしまって、その後始末に困っていた人がいたけど。そうではなくて。時間だ。いちばん大切なのは、時間だ。
 
空虚のつまった風の箱を積み上げる切実な関係性のために無関係を積み上げて無意味の意味を展開する時間をさしあげる大切な人へ大切なものを贈る唯一。とか書くと、句読点の大切さが伝わってくるだけで、ちっとも親切じゃないし、もちろん詩なんかじゃあない。人は読みたいように読むものだと聞いたので、読みたいように読んでくれたらいいんだと思う。
 
健気染みたのは嫌だ。献身的だなんて嘘っぽくて貧乏くさい。
 
上を向いてずうっと口をあけたまんま雨を受けるように時間をさしあげる。と決めた。冬だろうと夏だろうと、切り倒されてなくなったって、銀杏を濡らす雨の感じは時間の中に振り続いて、風でフードが脱げちゃって、降り続く雨なのか時間なのかくしゃくしゃの髪の毛を伝って落ちる時間なのか雨なのか、をずっとさしあげると決めた。それは、やっぱりビジュアル的に考えたって、どうにも間抜けな覚悟だけど、大馬鹿はぶれないんだと考えたら、気持ちはすっかり高揚した。秋だけに。