パスタったったと降ったのは9月の雨のことだった。
夕ぐれろ。と言って欲しかったのはプチプリンスだった。
プチプリンスはプッチンプリンに似ていなくもないが、
さても隣の客は良く牡蠣食う。
ペペロンチーノに乗っかった巨大なかたまりは
灰緑色にどろりと溶ける邪悪の牡蠣で、
でろりと溶けて私のぺペロンチーノを台無しにする。
フォークの一突きで、だらりほどけるでたらめの海鮮だ。
ときどき、だらしのない皿を出してよこすので、
もうこの店には来ないと、この前思ったばかりだった。
しぶしぶの嚥下ののちに、ぞろりとバリウムのごとくに落ちて行く謎の海鮮。
全部は食せない。
皿の上の曇天。
フォークの一撃に、私のペペロンチーノをみるみる覆い、ぐるりと回すとセメント色のうねりとなって本日のランチタイムを蹂躙するのだ。
それにしても隣の客は良く牡蠣食う客だ。
いつかは生きていたらしい海鮮が、雨を呼ぶ。またしてもパスタ屋の屋根に。窓に。
傘をたてかけたかったからたてかけていた壁際の傘を手に取りかたつむりのように歩いて帰る10月の雨。