角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

せいりん。


朝からずーっと強い雨の中をわざわざ出かけて入った店ではロッドスチュワートの"Sailing"がかかってた。
 
私が20代のOLの時、結婚式にはこのセイリングをかけて欲しいんだと話して、ひとみちゃんがいいよと言ってくれたけど、私はその後駆け落ちしたので、それどころではなかったし、もうそんなイベントはないので、嗄れた声を聞きながら、ただ、わしわしとハンバーグプレートをいただいた。
 
ひとみちゃんは本当に可愛い女の子で、街を歩くと知らない男の人が「かわいいこだなあ」と振りかえったりしたし、居酒屋では、オーダーしたくて遠くのスタッフににっこり会釈すると、スタッフの男の子がすっかり照れてしまい、オーダーをとりに来ないのだった。
 
支店の人と結婚して、ひとみちゃんはがらりと変わった。顔つきもすっかり変わってしまい、起きぬけでパジャマ姿のまま運転して夫を会社に送るんだと言った。

あの器量の良さと清潔感があっというまに変化したのには本当に驚いたものだ。結婚ってなんなんだろうと強く強く当時の私は考えた。
 
ごはんの後で苦い珈琲を頼んだ。この店は珈琲の量が多いので、いつも半分残してしまう。飲みきれないにしても、薄い珈琲は嫌いなんだ。
 
セイリングは、本当は船出の歌ではない。神様の元に旅立つ歌なのだそうだ。だから、そんな勘違いなことはしなくて本当に良かった。
 
ああそれから、今朝が雨ふりだったせいもあるけれど、少し考え事をしたら涙ぐんでしまった。バイト1号君の結婚を考えたからだ。母親しかいないのだ。彼には。私には兄弟姉妹がいない。親しく行き来している親戚もいない。だから私しかいない。
で、私は欠席したいのだが、どうだろう。
 
そんな話はかけらもないし、相手もいなければ、第一就職もしていないのだけれど。