角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

全米がなく

 

荷物が嵩張るから、自分の車で行こうかバスにしようか迷っているうちに、間に合わない時間になってしまい、タクシーに乗った。母の病院は山の上だ。場所を告げると、運転手さんが「頑張ります」と言った。FRなんだと言う。ほぼロードヒーティングにはなっているけれど、ちょうど病院のある通りが凍結していて、どの道を通っても氷の坂道を登るはめになる。
 
AT車でも来れるけれど、Dのままじゃ絶対に駄目と運転手さんに念を押されたので、Dでしか乗ったことのない私は、やっぱり諦めるしかない。
 
かあさんが言う、予測時間が短くなっている。
あと5年は生きたいと言っていたのが、いつの間にか、2年くらいでおしまいかな、と言いはじめ、先日は、今年一杯だと思うから、その後のことを考えておきなさいと言われる。
 
その場しのぎを私たちは言わない。
既に私は遺影にするならこれ、という母の写真を持ち歩いているし、用意は周到なのだ。
 
ついでに、内緒にしていた私の今後の方針を教えると、案の定反対された。
心配のあまり、可愛さのあまり、母さんは私を一緒に連れて行こうとするような気がする。そしたら特に拒む理由もない。
わたしをつなぎとめるものなんか本当は一つもない。
 
 
だって、愛は憎しみでしょう?憎しみに似たものではなくて、そのものだと思うんだ。
わたくしたちは憎しみの果てに同時完遂を願う。
 
 
午後から泳ぎに行こうかなと考えてたら、窓の外では、雪がそれこそ夢中になって降っていて、静かで静かで何にも見えなくなっていたので、バイト1号君と食べる夕ご飯の仕度をはじめると米櫃にわずかしか残ってなくて、米櫃を逆さにして最後の1粒を米とぎザルにあけると、家のなかのどこにも米がないので、やっぱり一緒に連れてかれても構わないような気がした。