角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

湿式

 

寒い一日に相応しく雨も降っていた。
給油をしてからホームセンターに出かけて蛇口とかを眺めたあと、開園したてのはまなすの丘公園に向かうと、群生植物は2010年の積雪に冬眠し、冬眠から覚め、何を失ったか、何が失われたか絶望の記憶をとりもどすために俯いていた。

鳥の声しか聞こえない。

どら焼きとブラックコーヒーを買ってビジターセンターの2階に上がると、湾内とはいえ波頭が砕け散る日本海が見えたし、低空を飛んだ鳶の背中も見えた。此の地には春が来るかもしれないし、春は来ないかもしれない。

ネットで読んだ記事には、疑う人が騙されると書いてあった。疑いは期待を孕んで膨れ上がり、さても厚かましい騙され集団が、浅い呼吸で、騙された騙された騙された騙されたと言い立てる。「俄か無垢」になって言う。私は、それをさもしいと思う。

むかし、人気の連続テレビドラマがあって、リアルタイムで見た時は、あっちの立場だった。
再放送で見た時は、こっちの立場だった。ゆるぎないはずの自分、の感覚は、見事に立ち位置で逆になっていた。


地平線を見ながらコーヒーをすする。
大ぶりのどら焼きも頬張っている。

コーヒーをゆっくり飲んでから、浜まで少し歩く。

そういえば、こないだ、何とかしなきゃと考えていたら、ロックミュージシャンのようだ、と髪の毛をさして言われた。量が増えた、伸びた、という。増えるわかめじゃあるまいし。
アンジェラアキみたい?とたずねると一瞬間があった。

砂浜まで行くと、強風で髪の毛がわさわさするからパーカーのフードをすっぽり被って怪しい女になって写真を撮ったら、私の写真には波の音も風の音も鳥の声も映らずに、本当はありもしない地平線だけが映っている。

浜に出るのに、近道をして砂地を歩いたら、乾いているように見えて、靴が汚れてしまう。
私はじめじめした所、水分のあるところが好きだ。湿気のあるところで繁殖したいと思った。
胡乱な生き物の私を。