角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

ちりぬるんだ。

 

ぬるめの燗酒で少し体をあたためてから、おもむろに冷やの田酒をいただいた。
大変気持の良いお酒だったし、久々にマスカラを塗った分、睫毛のあたたかさというものもあるかもしれなくて、自宅まで徒歩で帰ってきた。
私が自分の現在の苦境を吐露するより先に、新しい仕事の話を持ちだされる。昨年何回かそういう話をされていたが、いよいよ時機到来ということで、私に参加せよとのことだった。
 
昨日来社なさった老社長は、私の霹靂的事態にかかわる登場人物全員を良く知っている立場であるが、あちこちの事情をたっぷり聞いたうえで、そんなに大それた問題ではないと言ってくださった。問題は相手側の事情にあるのだとも。
 
2つき前に予約した航空券はキャンセルできない種類のものであるため、来月東京に行くが、ふと思い出して知人にメールした。この人は前の得意先倒産の折、自ら私の担当になり、何くれとなく面倒を見てくださった人だ。今の東京みどころを箇条書きに並べ、予約したいものがあれば連絡せよと返事がきた。かつ六本木で飲もうと。
 
事務所同室者は私の緊急事態を聞くや、ホワイトボードに欧米・日本・中国・アジアいろいろを書き、罫で囲み、現在の様相から長いスパンでどう変わるかを滔々と話しだし、かくなる上で、株価はこうなる、とプレゼンのごとくに説明してくれたので、何だかけむに巻かれて自分の事態がとるにたらない気がしてきた。
 
良く分かんないけど、みんなが私に親切にしてくれる根拠は、ひとつしかないと思う。
みんな、私の以前の仕事を知っている人ばかりだから、私がひたすら仕事をしていたのを見ていたんだと思う。
仕事しかしてこなかったので、というのは言い訳にすぎないかもしれないけど、私は世間のことも対人関係のルールみたいなことも社会的なことも何も知らない。何も分からない。
その希少価値、本当に何もわからない女だ、という希少性に価値を見出してるのかもしれない。私はコミュニケーション能力も高くないし、愛想も悪いし、惹きつけてやまない美貌の女でもなく、声のきれいな女でもなく(これは本当に気にしてる)、ましてやセクシーな女でもなく、私は、黙々と蚕のようにご飯を食べては生返事するだけで、そのくせころころと気分が変わる思いつきと場当たりで生きていて眠くなったらとっとと帰ってしまう役立たずの女だ。
その希少価値なんだろう。

まあ、なんでもいいから、飛行機に乗る可能性を諦めずに済むことだけが嬉しい。
私は飛行機が好きです。離陸するとき嬉しくてきゅんとします。だからたくさん飛行機に乗りたい。
と言ったら、小学生かと言われた。


あっその前に、私は、かーさんの介護をすることに決めたんだ。かーさんは私を見るたびに死にたい死にたい死にたい死にたい死にたいと言うし、高じると、きっと私を誘うと思うので、それはいやだ。