角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

頂点

 

中学生の時に、私は親に捜索願を出された事がある。
スキー学習の帰り、ぶらぶら歩いてたかだか30分くらい遅れたからといって、なんなんだと思った。
良い家の子でもないのに、親は厳しかった。二十歳を少し超えて朝帰りをしたときも、ああ気まずいと思ってそっと帰ると、今、捜索願を出すところだったと言われた。

勘弁してください。

これは大事にするのを通り越して過干渉だろう。過干渉にして不信行為なのではないか。
一体私が何をしたと、いや、いろいろしたんだけど。

母は私がこどもの時から私を見るのをやめない。
独りになってせいせいしたと思ったのもつかの間で、また、秋から一緒に暮らすようになってしまい。

私がこんな中年女になった今でも私の横顔や後姿なんかに視線を感じる。

正直、うっとうしいと思う。

私は朝の玄関で見送られるのが嫌いだ。
行く先を聞かれるのも嫌いだ。戻り時間を尋ねられるのも嫌いだ。本当に嫌いだ。

で、見送りに関しては断固拒否し、行き先と戻り時間については聞かれる前に申告することにした。

ところが先日は大失敗。ひょんなことからまた玄関先で見送られるはめになり。
そんときに、あ、と思った。

見送っているのは、かあさんじゃなくて

私だ。

そしてかあさんはNRだ。

NRってのは出先掲示板に良く書いてるあのあれ、ノーリタンってやつ。


面倒だったので、玄関の扉を後手に閉めて、ハンドルをとられたり滑ったりしながら、客先へ出かけたんだけど、時間調整で入ったモスバーガーが寒くて、コートを着たままコーヒーを飲んだ。

四十代っぽい男性客が先にいて、紙を広げていた。競馬新聞かなと思ったんだけどそうじゃなかった。
12月のなかばに、広げた書類は履歴書だ。

被ったキャップに「頂点」と書いてあった。