仕事的所用の帰りに豊平の宮田屋珈琲に寄る。
平日の午前中だから空いていて、大きなテーブルに独り、マンデリンをいただく。
珈琲茶碗を客なりに選択していただいているのかどうかは知らないが
本日の茶碗は薄く渋い小豆色の地にうさぎの柄の厚手茶碗であった。
皿には、うさぎと金の月。
のけものからけものに昇格した気分だ。
鳴かないけもの。
私は毎日、一定時間が経つと「うぅ」とか唸りながら珈琲を欲しがるが
その実、違いなんか分かっちゃいないので、熱くて苦ければそれで良いと思っているんだが。
茶碗を両手で挟むと眼鏡は曇るが肩の力がゆるむ。
初めてここにきてから1年半が経つ。
ずいぶん遠くに来たと思う。
1年半前には想像すらしなかったところに私はいる。
想像したところに行けたことなんかないけれど。
眼鏡を真っ白くしたまんま、私、思った。
それはそれはかなしいことを。
私が今まで誰かにした、非道いことをたくさん考えた。
そりゃもうひどくて口には出せないことばかり。
だったら、私であるはずがないじゃないか。
頂点が分かるのは通り過ぎた人間だけだ。
あなたの首にしがみついて
あなたの腰に足を絡めて
ああもう死んでもいいと涙流すのが
私であるはずがないじゃないか。
頂点を迎えるのは
私であるはずがないじゃないか。
本日のおすすめはマンデリンタケンゴン。