全部失う企画というのは企画会社の名称だ。
おわりのはじまりが始まる時が出発だという。
私は時間のすきまに足をかけて異次元に飛び乗るように発たなければならない。早過ぎても遅過ぎてもツアーに乗っかることはできないが、しかしどうしたって出発しないわけにはいかないツアーを企画した。
催行人員は独りだ。終わるまで止まらないし、止まるまで終わらない。ツアーの目的は、終わることだ。
もしかしたら旅がすでにはじまっているのかも知れないと思う。するとすでにおわりは、はじまったときに始まっていたのだ。
ああなんてめんどくさい日記なんだろう。
昨夏、私は熱烈であった。くしゃくしゃの髪の毛くらいはなんとかしようとヘアケア用品を「ジャスコ」で購入した。香りは「ようなし」だ。
目つきが熱を放っているごとくであったにもかかわらず、自分が選んだのは一番小さいサイズ、そう、一年ももたないサイズの「ようなし」であった。恋い焦がれていながら冷淡に私は予測した。絶対に忘れないと誓いながら、すてきな専門店でも百貨店でもなく買ったのはジャスコだった。
ジャスコで買ったんだった。
夢なんか追わない。
寝たいだけだった。
だが私は好きだとも言えず、指一本触れることもなく、そして確実に、自分はそんなことはできやしない。
ようなしは残った。
私はツアー中だが、夢に揺られてまどろんだりはしないものだ。
終端速度ちう。終端速度なう。
にちにちの泡。うたかたなう。
痛みの合間に、落ちるように眠る。
希望は、咳と咳の合間の激しい吸気のごとく、切実だ。
希望なんだ、旅の終わりは。特典が終わりにあるという。
「ツアーの終わりは、全部失う特典付き。」
困ったなあ…詩のようになってしまう。やれやれ、どーしたもんかなぁ。