角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

妄想の夏 うそつきの夏

 

私は今日、早朝から空港に向かった。

窓を全開して運転すると髪がなびくから全開して運転する。犬の舌、キリンの涎、風の日のワカメ干しのように。
プール帰りの茄子色の夜、高台にある病院からくだる坂道、白い花咲くじゃがいも畑、「あをめる色」の川べり、波打つ黄金を分かつ農道。

岡本太郎の太い線は、れるられる、れるられるを繰り返しているのだと私は思う。
赤い髪束がアクセル任せに、れるられるれれれるられるれーるられーるとなびく。

湖に霞のような雨が降ると、些細な雨粒は髪に読点を打つ。それから読点が増え赤い髪は沈黙する。
あるいはシャワーを浴び始めたばかりの陰毛のごとく、蜘蛛の巣の朝露のごとくに。

空港に向かう国道は、千歳市内に入ってすぐ大渋滞になる。
千歳基地航空自衛隊の航空祭のためだ。それで早朝からでかけたのだが、すでに気の遠くなる渋滞であった。


不思議な形の戦闘機が飛び立って一気に高い空にのぼった。
編隊飛行の一機が流れ星になってわたくしをつらぬかないものかと思う。

空港行きはあきらめて、う回路に入ると、さっぱりどこだから分からなくなって、いつものことだけれど、とりあえず前の車のあとをつける。どこからでも私は戻れるのだ。

鳥取の砂漠から鹿児島から真南風の島からチョウセンアサガオ咲く軒先から松江から神戸から、
どこからでもそこに。

あなたには夢がお有りか。わたくしには有る。
息継ぎしながらキスしよう。記憶をあげる。