角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

旅の棘。

 

去年の今時分は千葉から東京、そして沖縄、久高島を経て神戸から帰札、と結構な長旅をしていた頃だ。どこも曇天が多く肌寒ささえ感じた、というのをすっかり忘れて、京都・奈良・神戸から、つい先日戻ったのだけれど、やはり天候にはあまり恵まれず、雨降りの仏像見学となった。旅は私を変えない。何度も同じような間違いをするので、もう私は旅にでないかもしれない、と考えると、それなら生きてなくてもいい。

奈良の駅ですでにパラついていた雨が西ノ京駅では結構な降りになっていて、しかし駅売店とかキオスクだとか、駅前コンビニなどは皆無であったため、駅前の電気屋さんに入って傘屋はないかとお訪ねすると、ご自分のお家のビニール傘を差しだされて、もっていきなさいとおっしゃられた。大変ありがたく、薬師寺と唐招提寺を回る。

数年前に見た巡回展「棟梁」が好きで、それで昨年は念願の竹中大工道具館に行き、西岡常一の映像「鬼に訊け」も旅の振り出しに東京の写真美術館で見た。だから薬師寺は是非とも訪れたかったし、さらに玄奘三蔵院伽藍では再び平山郁夫の壁画に出会った。これもその前の年に、東博で見たものなので、自分的には、ここ数年来の興味の辻褄がぴたりと合って閉じたような今年の奈良行きではあった。

傘を電気屋さんにお返しして、市内に戻ると雨は降りやまず、コンビニで傘を買う。奈良の傘は重かった。大きいのを買ったんだろうと言われたけれど。


旅を懐かしんでスーパーで買った筍は、しかし、京都ではなくて福岡産だった。不用意に触って剛毛が指に刺さる。
ネットで検索してもそんな間抜けな例は見当たらず、4日目でまだ痛みがとれないため皮膚科で棘を抜いてもらう。

旅は私を利口にはしない。ただ次の旅に駆り立てるのみ。