角度ノート

駄文も積もればログ資産。かもね

7月 啜りあげる

 
7月啜りあげる。茄子揃う。
 
丸茄子はくりぬいて詰め直してベシャメルソースで焼いた。
長茄子は茹でて、急冷、かつおぶしと生醤油。
米茄子は油で焼いてバター少しで香りをつけて醤油をたらす。生姜醤油ならなおさら。
 
塩に塩。油に油。痛みに痛み。左手の切り傷、右手の火傷。3と6の間に4か5がある。
そこでわたしは茄子の日和の紫紺の夜に「とっておきの不毛」を取り出し栓を抜く。
喪失の香りがする。忘れ得ないにおいに、むせ返る。
 
喪失のにおいの前で、私が生きて在る事に意味はあるか。
 
啜りあげる7月。茄子喰らう夢。月のいびつの赤。ストロー震える。
 
それでいいんならそれがいい。それがいいんならそれでいい。
 
わたしがあなたを失うということは、あなたがわたしを失うということだ。
「わたし」や「あなた」というのは、抱き合っているかに見えたトリック写真の、それぞれの虚空につけられた名前だったか。