湯船から立ちあがると、胸の谷間にトンボがとまったので、そのまんま海からの風に吹かれた。
谷間から、ちりちり這って
そこは三合目。
トンボの無数の目の中は、何か白くて柔らかいモノだらけだ。
胸にトンボを甘えさせ、私は遠く海をみる。
大胸筋の外にあるもの、胸のうちなるもの、ぜんぶいとしい。
しがみつくもの、寄り添いたいひと、いとしさで私の胸は二つあふれた。
きょうは私が凪だ。
そこは五合目。
あ あ ああそこは
あきのあおぞら。
とまったのが銀蠅でなくて本当に良かったと思う。
石狩市の「番屋の湯」が10月15日で閉館になると、玄関先の貼り紙で知った。
とんぼに止まられたい方は行かれてはどうか。とんぼだって人を選ぶと思うけど。