靴べら屋さんに行けば、売るほど靴べらがあるに違いないので、買えばいいんだけど、けちくさい根性をもって、私は自宅の靴べらを事務所に持っていこうと、鞄にさした。
肩にかけた鞄をぐるっと背中に回すと、黄色い靴べらは20センチくらいも鞄から突き出て、ちゃんばらごっこのようになった。通勤スタイルとして、間抜けだ。
だけど、それを落としたこと・落としたことに気づかない方がもっと間抜けで、事務所についてから、失われた靴べらはもう下駄箱に帰ってこないという西洋のことわざを考えたり、「多分公園内に落ちているに違いない」靴べら発見者が思う妄想を思ったりしてすごす。
あのエスプレッソマシンで全種類のコーヒーカプセルを味見することを計画しているので、近くの友人の事務所に行こうかと考えていたら、先を越されて、向こうがやってきた。
エスプレッソマシンの効用を教えてもらう。コーヒーカップが収納できるとか、自然に乾燥するとか、後始末が簡単、といったことの前に、「コーヒーの量は滞在時間につながる」と。この友人もひとり事務所だ。
引越祝いに何がいいと聞くので、思わずエスプレッソマシンといいそうになったけど、「く、くつべらっ」。